73.企業の災害対策-AED対応・応急処置

2023/05/01

応急処置法を学ぶ必要性


自然災害によって企業が被る被害の中で、もっとも甚大なものは人命を損なうことでしょう。
混乱した状況下では、常に傷病者が同時に多数発生する危険と隣り合わせです。しかし、災害時の医療機関は常に満杯で、救急救命用の道具も不足していることがほとんどです。場合によっては、社内の応急処置のみで一時をしのがなければなりません。

そこで今回は、災害時における傷病と応急処置方法について紹介していきます。


災害時における傷病の種類


災害の種類によっては、傷病の種類と割合も変わってきます。

たとえば地震の場合は、割れたガラスによるケガが多くなりやすいです。加えて、落下物による打撲や骨折、頭部強打、転倒した暖房器具からの出火による火傷、家具の下敷きによる意識障害なども挙げられます。

台風の場合は、強風による転倒、飛来物との接触による骨折・打撲・出血、看板などの下敷きになったことで脊髄を損傷してしまったという事例もあります。

そしてどの災害でも同時に発生する恐れのある火災では、火傷はもちろんのこと、避難時の転倒による骨折や捻挫なども想定しておくべきでしょう。


応急処置の方法


上記の傷病に対応した応急処置として、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、一般的に誰もが活用できる方法を紹介していきます。

【止血法】
人間は一時に全体の1/3以上、体重1kgあたり80mlの出血をすると、生命に危険が及ぶと言われています。出血している人がいたら、すぐに止血を試みてください。
止血の方法は大きく分けて2つあります。

直接圧迫止血
出血している傷口を、ガーゼやハンカチなどで直接強く押さえてしばらく圧迫します。包帯を少しきつめに巻くことでも止血が可能です。感染症を起こす危険性があるので、救助者は原則としてビニール手袋や、ビニール袋を使用して圧迫します。

間接圧迫止血法
出血している部位より心臓側に近い動脈(止血点)を、手や指で圧迫して血流を止めて止血する方法です。緊急時に直接圧迫法だけでは止血できない場合、間接圧迫法を併用すると効果的です。

【骨折】
骨折した、または骨折が疑われる場合の応急処置は、まず“固定”です。そうすることで、その周囲の神経や血管を痛めることを防ぎ、悪化と痛みを軽減させることできます。
骨折箇所に添えるのは、専用の添え木や、代用品であれば棒や板、厚めの雑誌などです。三角巾や包帯が無ければ、大判のハンカチやネクタイを替わりとしても構いません。

【心肺蘇生法】
心臓停止は3分で50%、10分では100%の人が死に至るといいます。つまり、心臓が停止してからのほんの数分に適切な処置が行えるかで、生死が大きく変わるのです。
まず、倒れている人を発見したら、軽く肩をたたきながら「大丈夫ですか?」と声をかけます。この時、感染症対策として、傷病者の顔と救助者の顔があまり近づきすぎないようにしましょう。
倒れている人の意識を確認しながら、周りの安全の確保も忘れず行います。次に、「人が倒れました! 誰か来てください!」と大声で助けを呼び、周囲の人と協力して救助を行ってください。

そして、心肺蘇生やAEDといった応急手当をすることにより、救命の可能性がおよそ2倍に高まります。周囲の人を呼ぶ際には、AEDの手配も依頼するとスムーズです。

胸骨圧迫
昨今の新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、胸骨圧迫を開始する前には、ハンカチやタオルなどで傷病者の鼻と口を覆いましょう。マスクや衣服などでも代用可能です。
胸骨圧迫では、傷病者を仰向けに寝かせて、救助者は傷病者の胸の横にひざまずき、胸骨の下半分を手で圧迫しましょう。成人の場合、深さは胸が5cm沈むように、1分間あたり100~120回のテンポで実施してください。

人工呼吸
さらに、訓練を受けた救助者は、傷病者の気道を確保し、胸骨圧迫を30回、人工呼吸を2回のセットを繰り返します。
手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみ、口を大きく開き、傷病者の口をおおうように密着させます。約1秒かけて、傷病者の「胸が上がるのが見てわかる程度」の息を吹き込みます。一旦口を離し、息が自然に吐き出されるのを待って、同様に2回目の吹き込みを行ってください。
※ただし、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、成人の心停止に対しては、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫とAED による電気ショックを実施します。
子どもに対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合のみ、胸骨圧迫と組み合わせて実施します。

【AEDによる救命活動】
AEDは電源を入れると、音声ガイドが使い方を教えてくれます。心臓の状態を自動診断し、電気ショックの必要の有無を判断して教えてくれるため、講習などを受けていない人でも救命活動を行うことが可能です。

とはいえ、緊急時にはなかなか冷静に動けません。また、AEDは手技による心肺蘇生法と組み合わせて使うことで、延命率を高めることができます。消防署などが実施する講習会では、AEDの使い方と心肺蘇生法を学ぶことができるので、積極的に参加してみてください。


平時に応急処置のスキルを身に着けておく


災害時には応急処置の知識が必須です。今はe-ラーニングで応急手当の基本知識が学べる、一般市民向け 応急手当WEB講習も用意されています。特に企業の災害対策に関わる人は、これらを活用して、もしもの時に役立つ知識やスキルを身に付けておきましょう。

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