76.企業の災害対策-オフィスに宿泊するなら用意すべき備蓄は?帰宅してもいいの?
2023/05/01
いつでも、どこでも、被災する恐れがある
中小企業庁のデータによると、自然災害の発生件数は1971年から2018年までに、変動を伴いながらも増加傾向にあります。発生件数が増加すればするほど、いつ・どこで被災するか分からず、自宅や歩いて帰れる距離の場所ではなく、勤務先で被災する恐れもあるのです。
自宅とは違い、勤務先は誰が防災関連を担当するか役割分担ができていないケースもあるでしょう。
それが原因で、防災用品や備蓄の準備が、後手に回ってしまっている企業もあるのではないでしょうか。
しかし、企業も対応を後手に回してばかりではいけません。
災害の規模によっては、どのような企業であっても甚大な被害を受けることがあります。
例えば、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)では、豪雨災害としては初めて、中小企業被害が激甚災害として指定されました。(激甚災害=大規模な地震や台風など著しい被害を及ぼした災害で、被災者や被災地域に助成や財政援助を特に必要とするもの)
こうした被害をもたらす大雨は、この30年間で1.4倍に増加しています。今後も大雨に限らず、自然災害は増加していくでしょう。
寝泊まり用のグッズは自分で用意しよう
また、企業側が防災用品を用意していたとしても、最低限の量や質である可能性はあります。もし、オフィスでも平時のようにリラックスすることができれば、きっと肉体的・精神的な疲れも和らぐのではないでしょうか。
そこで準備したいのが、オフィスでの寝泊まりを快適に過ごせるグッズです。その理由は2つ。
1つは適切に睡眠を取ることで、体力を回復させることができるからです。眠れなくても、横になるだけで体を休めることができます。
もう1つは、飲料水や食料と違い、寝泊まり用の備蓄の準備は優先順位が低くなりやすいからです。防災用品と聞いて、真っ先に寝泊まり用のグッズを連想する人が滅多にいないですよね。
重要度は高いものの、緊急度が高く見えにくいため、優先順位が低くなっているのでしょう。
災害発生時に勤務先に滞在していた場合は、ほぼ確実にその場での寝泊まりを余儀なくされます。これは、東日本大震災の直後に大人数が一斉に帰宅しようとして大混乱が生じた経験から、災害直後の一斉帰宅を抑制する動きが強まったからです。72時間(3日間)は帰宅できないものと覚悟しておきましょう。
3日間を固い床の上で寝泊まりするのは、体力的に厳しいものがあります。ケガや病気の状態ではとても耐えられませんし、そもそも固い床の上で寝ることで、健康を損ねる危険もあります。
会社員全員分の寝具はまず支給されないものだと考えて、毛布やエアーマットなどを用意することをおすすめします。
余裕があれば準備しておきたいもの
寝泊まり用のグッズの他にも、余裕があれば準備しておきたいものはあります。特に、企業側で準備できないものなどは、個人の責任で常備しておく必要があります。
・追加の飲料水と食料(自宅への帰路で必要な分)
・履きなれた動きやすい靴
・一泊分程度の着替え(動きやすく丈夫な服がおすすめ)
・歯みがきセット
・消毒グッズ
・汗拭きシート
・生理用品
・メガネ(必要な人のみ)
帰宅開始は最低でも72時間後から
無事にオフィスで72時間(3日間)を乗り切り、帰宅ルートの安全が確認できたら、少しずつ従業員の帰宅が可能になります。とはいえ、普段使っている交通機関がマヒして動かない恐れや、他の企業や施設で72時間待機していた人たちが帰路や押し寄せてしまう恐れがあります。
帰宅途中に二次被害に遭っては元も子もありませんので、インターネットやテレビ、ラジオなどで正しい情報を集めてから帰宅判断を下す必要があります。
徒歩で帰宅しようと考えている場合は、絶対に自分の体力を過信してはいけません。「いつもは歩けているから、今回も大丈夫」といった考えは事故につながります。特に、自宅までの距離が10キロメートルを超えたあたりから、帰宅困難者が増加する傾向にありますので、少しでも無理そうだと思ったら、引き続き安全な場所で待機する方が賢明です。
そして、自宅までの距離が20キロメートルを超えると、どれだけ体力がある人でも帰宅はほぼ困難です。
自宅に帰りたい気持ちはぐっと抑えて、安全に帰れる手段が整うまで待機しましょう。
帰宅できると判断した場合は、自宅にたどり着くまでに最低限必要なものだけを持って、移動します。安全のためにも、両手が空いた状態で移動できるよう工夫しましょう。リュックサックを準備しておくのも手です。
また、災害時帰宅支援ステーションや避難所、一時滞在施設などはインターネットで場所を確認することができます。急いで帰ろうとはせず、少しでも疲れや不調を感じたらこれらの施設を利用しましょう。
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