78.企業の災害対策-地域との連携

2023/05/01

“災害に強い地域”をつくる

自然災害 イメージ画像

自然災害は、いつ発生するのか特定することが極めて難しいものです。そのため、自宅だけでなく滞在時間の長い勤務先で災害に遭うことも想定する必要があります。そして災害に遭った場合、少しでも被害を軽減したり、早く復旧したりするには、きっと企業の努力だけでは難しいことも多いでしょう。

そこで必要なのが、企業の立地する地域との連携です。連携することで、はじめて企業も災害に強くなることができます。


地域と連携することの大切さ

黒板 チームワーク

特に自然災害は、建物の倒壊や火災などの被害に加え、物資や人手不足、ライフラインの停止といった二次災害も引き起こします。しかし、二次災害に備えるためには、企業単独の取り組みではどうしても限界があります。そのため、地域の自治体や住民、同じ地域の他の企業などとも連携し、互いに協力して災害対策を行わなければなりません。

例えば企業は“地域防災協定”を結ぶことで、地域と連携する体制を構築することができます。
すなわち、災害が発生してから物資や人の援助を求めるのではなく、前もって協定を結ぶことで、混乱を最小限に抑えることができるのです。


地域防災の取り組み事例

助け合い イラスト

いくつか地域防災の事例をご紹介します。
北海道では平時から、災害時の被災者や被災地支援に協力してくれる、企業や団体を募集しています。

主な協力内容はこちらの5項目です。
・帰宅困難者への支援
・緊急・救援輸送等の支援
・食料・飲料・生活物資等の供給支援
・緊急車両や災害対策上重要な施設への石油類燃料等の優先供給
・避難場所としての宿泊施設の活用


現在、協定には大手スーパーマーケットや、コンビニエンスストア各社、飲食チェーンなどが協力を表明しています。
道は災害の発生に備え、迅速な対応が可能なよう、日々、防災意識の高揚と地域防災力の強化に努めています。

一方で、都心部での地域防災の取り組みは、都心部ならではの“事情”を加味した内容になっています。
例えば、1日あたり約350万人の乗降客数が利用する、一大オフィス街・新宿駅。新宿駅周辺は、災害が起きると、帰宅困難者による駅周辺の混乱が予想されます。特に、夜間人口に比べて昼間人口が圧倒的に多いという特徴から、平日の業務時間帯に災害が発生し、交通機関が停止した場合は、37万もの人々が滞留すると見込まれています。

そこで、周辺地域内で連携・協力して防災対策を推進すべく、新宿駅周辺防災対策協議会を結成。平時から情報交換を行い、事前に取り決めたルールに基づいて行動できるか確かめる合同防災訓練や、全国初となるターミナル駅周辺の混乱防止訓練などを実施しています。


企業ならではの“資源”を活かして

団結 協力

では実際に災害が発生した場合、企業に求められる姿勢や行動とは何でしょうか?
地域防災の観点から考えると、企業ならではの“資源”を有効に活用することが、行動のヒントになります。
例えば、企業には業務で使用する商品や資材、機材など有形の“資源”があります。飲料水や食料品、医薬品などを扱う企業であれば、それらを提供することが企業としての活動になるでしょう。また、重機や車両を持つ企業であれば、救助活動や物資の運搬という形で地域に貢献することも可能です。
最近は有形物を取り扱わない企業も増えてきましたが、そういった企業でもできることはあります。

・オフィスに避難者や帰宅困難者を受け入れ、避難場所や休憩場所として活用
・社員を派遣して、避難所の運営や災害ごみの撤去などのボランティア活動に従事
・屋外に広い敷地を持つ企業であれば、ヘリコプターの緊急離着陸場所として敷地を提供
こういったことも、企業の“資源”を活かす立派な貢献です。


特に避難者の受け入れは、都心部の重要な課題と言えます。
都心部では、災害が起これば必ず買い物客や観光客などの“行き場のない人々”が発生します。行き場のない人々を一時的に受け入れるスペースは、残念ながら、公共施設や商業施設だけではまかないきれません。もし建物の安全が確認できて、かつ受け入れるスペースがあるならば、オフィスを開放することも、企業の社会的責任を果たす上で大切なことではないでしょうか。

企業と地域は連携することで、災害の被害をより小さく、災害からの復興をより早くできる実現できるでしょう。
日頃の連携が、ゆくゆくは企業の社会的価値の向上につながりますし、企業として地域の防災のためになにができるか、一度考えてみてはいかがでしょうか。



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